↑物語が始まる場所、デイヴ・フィローニのスケッチ。
前回の記事
の続きです。
その1 盟友ジョン・ファヴローと『マンダロリアン』秘話
『マンダロリアン』で“黄金タッグ”を組むことになったデイヴ・フィローニとジョン・ファヴロー。
彼ら2人の出会いは2008年まで時を遡ります。
『クローン・ウォーズ』の公開年でもある2008年、ファヴローは自身の監督作『アイアンマン』のサウンド・ミキシングをスカイウォーカー・サウンドで行いました。
ちょうど同じタイミングで、ルーカスとフィローニは『クローン・ウォーズ』シーズン1を最終編集していたので、公開前の作品をお互いに見せ合ったのだそう。
それが2人の運命的な出会いでした。
その際にファヴローは『クローン・ウォーズ』を気に入り、声優が必要なら声をかけてほしいと言ったのです。
そんな経緯で、彼はシーズン2でプレ・ヴィズラの声を演じることになります。(ちなみに『マンダロリアン』では同じヴィズラ一族のパズ・ヴィズラの声も担当)
ドラマ『マンダロリアン』は、2017年にキャスリーン・ケネディから新作の製作をオファーをされたファヴローが、提案したアイデア(マンダロリアンがザ・チャイルドを連れる『子連れ狼』風ストーリー)が元になっていますが、
フィローニからも「マンダロリアンの歴史を扱いたい」と聞いていたキャスリーンが2人を引き合わせたそうです。
約10年ぶりの再会を果たした2人が手を組み、スター・ウォーズを一つにまとめる神作を生み出したのでした…。
▼『マンダロリアン』製作秘話の詳細は『スター・ウォーズ『マンダロリアン』シーズン1公式アートブック』で読むことができます。
その2 大のゴジラ好き
フィローニは大のゴジラ好きです。
子供の時、祖父母の家で1954年オリジナル版の『ゴジラ』を見たのが始まりで、映画は何度も観たそう。
80、90年代にバンダイから出たフィギュアのコレクションを持っており、映画はすべて家に揃っているほどのマニアだといいます。
さらには、メカゴジラのコスプレも自作したことがある上に、
『クローン・ウォーズ』製作時には、ルーカスにしつこくゴジラの話しをし続けたところ、ゴジラをオマージュした回を作ることになったほどです。笑
それが “(GOD)ZILLA” に寄せた “Zillo” beast(ジロ・ビースト)である。
▼参照
その3 家族からの影響(音楽・レジスタンス)
ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外のマウント・レバノンで生まれ育ったデイヴ・フィローニ。
クリエイターとして歩む人生は、家族から多大な影響を受けています。
父親の故アルバート・ローレンス・フィローニ氏は、ピッツバーグを拠点とする建設事務所の社長でした。
彼はオペラやクラシック音楽の大の愛好家で、劇場の建築やオペラの舞台装置の製作に携わったこともあったそうです。
その影響でデイヴは、幼い頃からクラシック音楽に親しみ、音楽への深い理解を育みました。
デイヴが持つ音楽の才能を象徴するエピソードを一つご紹介。
『クローン・ウォーズ』から、『反乱者たち』『バッド・バッチ』まで作曲を手掛けてきたケヴィン・カイナーによると、
スローン大提督のテーマの作曲において、パイプオルガンを使うことを提案したのはデイヴ本人だったそうです…。
あの禍々しくもあり神々しくも感じるテーマ。
銀河を土足で闊歩するようなベイダーのテーマと違い、スローンらしさが光るテーマですよね…。
※ケヴィン・カイナーとデイヴ・フィローニの話は別記事で特集する予定です。
他には父親の影響によって、10歳の時に黒澤映画を見せられたそうです。
スター・ウォーズの英才教育ですね。。
また、第二次世界大戦のパイロットであった祖父と、飛行機の修理をしていたおじに影響を受けたことが、アニメ『レジスタンス』の着想になったといいます。
▼参照
その4 オオカミとプロ・クーンとアソーカとハットと。
デイヴ・フィローニといえば、オオカミ(Wolf/ウルフ)ですよね。
『クローン・ウォーズ』のコマンダー・ウォルフ
『反乱者たち』のデューム(ロズ=ウルフ)、狭間の世界の入り口の壁画
『マンダロリアン』のトラッパー・ウルフ
デイヴ・フィローニ後のスター・ウォーズでは、度々オオカミの要素が登場しています。
その訳についてフィローニはこう語っていました。
「インスピレーションの元となったのは、『ネバー・クライ・ウルフ』*という映画でした。幼かった私に、自然環境やオオカミの世界を教えてくれました。…中略… オオカミというのは人間にとって二面性のある存在だと思っていて、ライトサイドとダークサイドのあるフォースと似ていると思うんです。オオカミに関して語られる際も、光と闇の両面が語られます」
*1983年に公開された映画で、ある男がカナダ政府に依頼されて、トナカイ激減の原因とされたオオカミの生態を調査するというストーリー
ルーカスが面接で一発OKを出すのも納得なフォースの解釈です…。
プロ・クーン
そんなフィローニがスター・ウォーズで好きなキャラクターは、EP2・3で登場したジェダイのプロ・クーンだそう。
ルーカスフィルムからオファーの電話が来た時も、ガレージでプロ・クーンのコスチュームを作っていたらしいです。笑
Dave Filoni first believed the offer to helm #TheCloneWars was a prank. When he received the call, he was making a Plo Koon costume in his garage. #StarWarsCelebration
— Star Wars (@starwars) April 8, 2023
恐らく、そういったことが関係してプロ・クーン傘下のクローン分隊に「ウルフパック」、司令官に「コマンダー・ウォルフ」という名前が付けられたのでしょうね。
プロ・クーンへの執着はかなりのもののようで…
ジョージ・ルーカスに対して、プロ・クーンがオーダー66を生き残ったことにするアイデアを提案したり、
『マンダロリアン』シーズン2でルーク・スカイウォーカーを再登場させる際には、万が一の情報漏洩に備えて「プロ・クーンが再登場する」というオトリの偽情報をでっち上げたりしました。
その際にはコンセプトアートまでしっかり作ったそうです。(信憑性を上げるためだろうけど、楽しかったんだろうな…笑)
“Koh-to-ya, Master Plo.”
“Koh-to-ya, little ‘Soka.”
(クローン・ウォーズ シーズン1第2話より)
ちなみに、幼きアソーカをジェダイ聖堂に連れてきたのもプロ・クーンという設定になっています。
アソーカ・タノ
さて、お次はプロ・クーンに連れてこられたアソーカの話。
私は完全にフィローニの子だと思ってたのですが、ジョージ・ルーカス発案なんですね。
ルーカスが「アナキンにパダワンをつける」という判断をしたとフィローニが発言していました。
フィローニ自身もびっくりしたそうで、アナキンに弟子がいたなんて考えたこともなかったと言っています。
アソーカは『反乱者たち』シーズン4のエンディングでは、ガンダルフが着ているような白い衣に身を包み、杖を持って登場しました。
これについてはフィローニによる『ロード・オブ・ザ・リング』へのオマージュだと思われます。
Was thinking of all of you this fine morning, Happy Holidays!
– Dave pic.twitter.com/WpD0kKMbfk— Dave Filoni (@dave_filoni) December 25, 2019
最大の敵と自分は直接戦わず、適役だと思われる人物を導いていく、というオーダー66後、ポスト・ジェダイのアソーカの在り方をガンダルフに重ねているのかもしれません。
トレードマークのハット
フィローニといえば、でもう一つ欠かせないのがあのハットですね。
なんと「なぜいつもハットをかぶっているのか」に関するインタビューまで発見しました。笑
理由はシンプルで「自然の中に出かける時に身に付けるもの」だから(?)
ハイキング、キャンプ、そして“オオカミ・ウォッチング”が趣味だと言うフィローニ。
『クローン・ウォーズ』製作中には休暇を取り、オオカミの写真を撮影しにカナダを訪れたそうです。
アソーカ:「見て、キャド・ベインよ」
アナキン:「確かか?」
アソーカ:「奴以外に誰があんな帽子かぶるのよ?」
アナキン:「言えてるな」
(『クローン・ウォーズ』シーズン4第16話)
その5 出演者としてのデイヴ・フィローニ
結構な頻度で作品内にも登場しているフィローニ。歴代の代表的なキャラクターを紹介していきます。
『クローン・ウォーズ』エンボ
あのクールなエンボもフィローニが声を担当していたとは、調べるまで知りませんでした…。
『反乱者たち』チョッパー(C1-10P)
チョッパーの声やってるのはわりと有名かも。
バイナリー原語を話すドロイドの中では、一番何言ってるか分かる感情豊かなドロイドですよね。
『クローン・ウォーズ』シーズン7 チープ(CH-33P)
チョッパーと同じC1シリーズのドロイド。
ここまでは声優としての登場ですが、実写ドラマに入ってからは本人が登場しましたね。
『マンダロリアン』トラッパー・ウルフ
新共和国所属のXウィングパイロットです。
ちょい役ではありますが、シーズン1~3で皆勤賞しています。
トラッパー・ウルフについては、今後の作品でも登場する可能性あり??
その6 アバターとの関連性
青い方ではなくて、『アバター 伝説の少年アン』の方です。
ルーカスフィルムに引き抜かれたので、初期しか関われなかったフィローニでしたが『クローン・ウォーズ』において同作のオマージュ演出をしています。
その前に実はフィローニ以外にも、『アバター』とTCWにはもう一つ共通点があります。
クローン全員の声優を務めるディー・ブラッドリー・ベイカーが『アバター』ではネコバス風のキャラ「アッパ(Appa)」の声優を担当していたんです。
そのような経緯から、コマンダー・アポー(Appo)のヘルメットには同作の主人公アンとアッパと同じ矢印マークが付いています。アポーの声優はもちろんベイカーですね。
本記事公開の少し前に発表されたゲーム Star Wars: Outlaws で、ベイカー氏が小さなクリーチャーの声を担当するということでしたが、アッパを知っているとそこまで驚く采配ではないことが分かりますね。
(あの低音クローンボイスからの振り幅がすごいことに変わりありませんが…)
さいごに
途中から「俺は何の情報を追いかけてるんだ?」と自問し始めてもいました。笑
ま、とにかく今後のスター・ウォーズを背負っていく彼をより深く知れば、作品に隠された意図まで理解しやすくなるとの信念で謎記事を書き上げました。
スター・ウォーズのインスピレーションとなった黒澤映画などの作品、ポップカルチャー、音楽、自然と様々な分野への造詣の深さがフィローニらしいスター・ウォーズを形作っているんですね。。
まずは『アソーカ』に期待です。
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