先日、久しぶりに『エピソード3/シスの復讐』を観ていたところ、ムスタファーでのアナオビのやり取りに、ふと違和感を覚えました。
あれ、オビ=ワンってなんでアナキンが闇堕ちしたのかほとんど把握できてないのでは?
各キャラクターによって把握している情報の差がかなりある。
なんか初歩的な話だけど、他の作品の解釈もだいぶ変わってくるぞ…。
ということで、節穴だらけの目を持つ私が今更気付いたことをまとめていきます。
事実関係の整理
アナキン闇堕ちの理由
まず、大前提となる「アナキンがダークサイドに堕ちた理由」から整理していきます。複合的な理由なので、これと断言することは難しいですが、できる限り要点を絞って考えていきます。

(C)2024 Lucasfilm Ltd.
①パドメが出産で死ぬ夢を見る
②パルパティーンから「パドメを救うにはダークサイドの力を私から学ぶしか方法はない」と迫られる
③メイスがパルパティーンを殺そうとしたため、パドメを守るためにパルパティーンを守り、シスの弟子として力を学ばざるを得なくなる
①の夢を本気で信じているのは、同じように母を亡くしたからです。
②の対処法として、事前にジェダイの助けを借りようとヨーダに相談していましたが、回答は「諦めなさい」でした。
皮肉なのは、②と③の対比。
②の時点でアナキンがパルパティーンを殺さなかったのは、ジェダイの教えを守ったからであり、
③でメイスがジェダイの教えを破ろうとした結果、アナキンがシスになってしまった。
アナキンはダークサイドがパドメを救う道だと唆されても、すぐに受け入れることはありませんでした。もちろん、パドメを救うと言ってくれた唯一の頼れる相手ではあるものの、クローン戦争の黒幕を討ち取るという栄光に先走ることもなく、ちゃんとジェダイに正体を知らせ、オーダーへの忠誠を尽くし続けていたのです。
そして、自ら掟を破るジェダイに裏切られました。
つまり、アナキンがダークサイドに堕ちたのは、大切な存在であるパドメを死から救うための(アナキンなりの)唯一の解決策として、選ばざるを得なかったことが理由と言えるのではないでしょうか。
オビ=ワン・ケノービの前提知識
次に、アナキン闇堕ちの理由を理解する上で前提知識となる「パドメとの仲」と「シミの死」についてオビ=ワンが知っていたことを、各作品から振り返ります。
●エピソード2冒頭:パドメとの10年ぶりの再会で感情的になり、母のことを夢に見て悩むアナキンと話す
オビ=ワン「疲れた顔だ」
アナキン「最近眠れなくて」
オビ=ワン「お母さんのことを?」
アナキン「なぜ母の夢を見るのでしょう?」
オビ=ワン「夢は一時のことだ」
アナキン「夢を見るなら、パドメの夢を見たい。彼女との再会は夢のようです」
オビ=ワン「そういう気持ちは危険だ」
●エピソード2終盤:ドゥークー戦の直後、隣で熱い抱擁をかわすアナキンとパドメをおそらく目撃する
●小説『Brotherhood』:クローン戦争勃発(エピソード2)の後、タトゥイーンで何があったのか(シミの死)をアナキンに聞くことができず仕舞いになる
●クローン・ウォーズ シーズン6:パドメが元カレと仕事をすることになり、不安定になるアナキンに説教する
オビ=ワン「お前の気持ちも大体分かる。私もかつてサティーンに秘めた想いを抱いていた。そうした気持ちを持つこと自体が禁じられているわけではない」
アナキン「アミダラ議員は単なる友人です」
オビ=ワン「友人のままでいるべきだ。ジェダイとして、オーダーのために正しい選択をすることが重要だ」
●クローン・ウォーズ シーズン7:アナキンがパドメと定期的に連絡を取っていることを知っている
●エピソード3:パドメのお腹にいる子供の父親がアナキンだと推測する
つまり、アナキンの母シミ・スカイウォーカーの死については、少なくともアナキンから直接真相を聞くことはありませんでした。
パドメとの仲については、かなり親しくなり、パドメの妊娠を見て2人が関係を持ったことには気付いていましたが、パドメに関する悪夢については知らされてませんでした。悪夢を知っているのは、パルパティーンとヨーダのみです。(ヨーダは「親しい人の死が迫っている」ということだけ聞かされました)
シミの死について、オビワンが自分で調べに行った可能性はあります。ヨーダは、アナキンが深い悲しみに襲われたことをフォースを通じて知っており、その時間にタトゥイーンにいたことも知りました。さらに、オビ=ワン自身がEP3最後でアナキンの親戚としてラーズ家を把握していたので、ヨーダから事情を知らされて、EP3以前にラーズ家にたどり着いたと考えるのが自然だといえるでしょう。
エピソード3内でオビ=ワンが目にしたもの
以上の前提を踏まえて、火山惑星ムスタファーの戦いに至るまでに、オビ=ワンがどのような情報を得られていなかったのかを整理していきます。
・パドメの悪夢
・アナキンがメイスに「パルパティーンがシスである」と報告したこと
・メイスが丸腰のパルパティーンを殺そうとしたこと
一方で何を目にしたのでしょうか?
ジェダイ聖堂の監視カメラ映像のみです。
映像には、アナキンがジェダイを虐殺している姿、ベイダー卿として皇帝から命令を受けている姿が映し出されます。
最愛の人をいわば人質にかけられながら、ジェダイへの忠誠心を尽くしても裏切られたという“原因”を見ることなく、“結果”である最悪の場面だけを見たのです。
以上を踏まえてオビ=ワンは誤った早合点しました。パドメに対して「何もかも議長の陰謀だ。(中略) ドゥークーの死後、アナキンがシスの弟子となっていた」と発言しています。
つまり、全てをパルパティーンの責任にしています。オビワンがすべきであったことは、アナキンが率直に謝ってきた時に、ジェダイの師匠としてではなく“兄”として不満に耳を傾け、相談に乗ってあげることでした。
これまた今更ですが、オビ=ワンが見たのは“ジェダイ聖堂”の記録映像です。つまりパルパティーンは既にムスタファー行きの指令まで伝えていたにもかかわらず、わざわざ執務室を離れて聖堂まで出向き、師弟関係があることを見せつけているのです。
オビ=ワンとアナキンの絆を断つため、最大限のセッティングがなされていたといえるでしょう。
ヨーダが出発前にアナキンから相談されたことをオビ=ワンに伝えていたら…
オビ=ワンが出発前にアナキンになぜそこまで不満が溜まっていたんだ?と聞いていれば…
またはメイスが丸腰のパルパティーンに斬りかかったことを知っていれば…
私もYouTubeで見た指摘で気付いたのですが、パルパティーンがシスであることをアナキンに明かす場面。よく見るとアナキンのライトセーバー起動時に、パルパティーンも左手を動かし、一瞬ライトセーバーを袖口から出す準備をしていることを確認できます。
結果としては圧勝となったパルパティーンですが、本当にギリギリの綱渡りを仕掛けていたことが分かります。
ムスタファー再考
ということで、やっぱりオビ=ワンはかなりの誤解と共にアナキンと対決しているのが分かります。

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何なら、ドゥークーを殺した直後にシスとなる儀式を既に行っていて、パルパティーンへのスパイ任務への反応は“師匠”への詮索に対する牽制で、コルサントでの最後の会話もオビ=ワンをからかい油断させるための発言だったと解釈していそうです。。
だからこそアナキンの言う「ジェダイの嘘」が意味することを理解できないし、反論は「パルパティーンは悪」という薄っぺらいもの。
「シスらしい決めつけ」をしているのは、パルパティーンによって情報操作されて早合点しているオビ=ワンにも言えることではないでしょうか?
ルーク、そして後世への影響
後にルークは、オビ=ワンとヨーダから情報操作を受けながらも、ダークサイドに堕ちた理由など考えず、父を信じる決断を下しました。
しかし、アナキンがダークサイドに堕ちた詳しい理由は知らないままです。
エピソード8では「ジェダイがベイダーを生んだ」という浅はかな理解でジェダイ批判を繰り広げます。
オビワンの早合点「全部パルパティーンの陰謀だ」と同じ、「悪いのはその人の近くにいた悪いやつだ」という構図です。
そう考えると、『エピソード9』はレイがルークを認め、ルークもなぜベンに刃を向けたのかを素直に話すことができれば、ようやくこのジェダイの過ちの輪が閉じると言えるでしょう。

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