初見ではアナキンの教えを咀嚼しきれずにモヤモヤし、アニメ版TCW(特に声優)への偏愛が強すぎて実写版に戸惑い、1人で延々と浮遊していました。
ようやく自分の中で第5話のメッセージが腹落ちしたので、その過程を記していきます。
※セリフの日本語訳は既訳を踏襲しつつ独自に補足しています。
アソーカが向き合った“最後の訓練”
①“死ぬ”直前を振り返る
まずは、“訓練”前のアソーカがどういう心境にあったか、ベイラン戦でのセリフを元に考えていきます。
“Surely that must leave a mark. Is that why you walked away? Abandoned him?”(彼の闇堕ちでさぞ傷ついただろう。だから彼の元を去ったのか?見捨てたのか?)
by ベイラン・スコール
これは『反乱者たち』シーズン2でアソーカが直面した苦しみです。
ベイダーの正体を知った瞬間は気絶してしまうほど、強いショックを受けました。
ですが徐々に立ち直り、再戦の時を迎えた際には「今度こそは置き去りにしない」と言い、“師匠を救いたい”という方向に向かいます。
“Your legacy, like your Master’s, is death and destruction.”(君のマスター同様、君も死と破壊しか残さない)
ベイランの挑発に乗って猛攻を仕掛けますが、目的はあくまで航行を止めること。
セイバーで斬れる隙もありながら蹴り飛ばすのみでした。
敵であっても、“死と破壊”をもたらさないために。
You know no other way.(君は他の道を知らない)
I’ve known no other way.(私は戦争以外の道を知らない)はTCW S7でのレックスのセリフ。
やっぱり、ベイランは相手の頭の中に入り込んで、見つけた弱点ぽいことをポンポンと口に出してる感じなんですかね。
この後のアナキンと形は違えど、ここまでのベイランの言葉はアソーカが持つ過去の傷口を無理矢理 開かせています。
Destroy it!(壊すのよ!)
by アソーカ・タノ
サビーヌが星図を手にするも、壊せないだろうと諦め気味。(2度目の裏切り、師としての失敗)
その様子を見て、ベイランは戦いを続行して問題ないと判断し、アソーカを崖から突き落としてしまいます。
ヒュイヤンには酷な話ですが、2人は“離れていなかった”のに失敗したのです。
また、このセリフからはサビーヌへの接し方の変遷についても興味深い点が読み取れます。
1~2話は命令スタイル
・The map stays here.(星図を持ち出してはダメ)
・You’ve done enough.(もう十分よ)
・No. You need to recover.(あなたはここで待ってなさい)
※ジェダイの訓練:3話
4話〜ここまでは質問・共感スタイル
・Can I count on you?(頼りにしていい?)
・I know how much Ezra means to you.(エズラがどれだけ大切な存在かは知ってる)
・Sometimes we have to do what’s right regardless of our personal feelings.(私情を捨てて正しいことをしなければならないこともあるの)
序盤では語気強めに“正しいこと”を押しつけていたのに対し、段々とサビーヌ自身の良心に問いかけるようになってきました。
からの「壊すのよ!」というバリバリの命令。。。
表面上の変化があっただけで、アソーカの態度は変わっていませんでした。
つまりアソーカは、サビーヌが“正しい”方向に変わることを期待し続けていたのです。
そしてサビーヌが変われないのは、自分自身のせいであると責任を感じていました。
アナキンが闇に堕ちた時、救えなかったことを後悔しているように。
正直私としては『反乱者たち』内でアソーカは“アナキン闇堕ち”の後悔について踏ん切りを付けきっていたと思っていました。
しかし本話を観て、そうではなかったと思い直しました…。
後悔を乗り越えたのではなく「“アナキンの悲劇”を繰り返してはいけない」という新たな呪縛を己にかけていただけだったのです。
「グローグーはあなたへの執着が強いせいで、恐怖や怒りに呑まれやすいの。最も優れたジェダイでも、負の感情には勝てなかった」
by アソーカ・タノ(『マンダロリアン』シーズン2第5話)
“執着”を理由にグローグーの修行を断ったのに、師匠に対して最も強い執着を持っていたのは実はアソーカだったのではないでしょうか…。
②はざまの世界での邂逅
アソーカ:You look the same.(昔のままですね)
アナキン:You look old.(お前は老けたな)
アナキンは昔のまま、つまりアソーカが最後に見た“アナキン”の姿である『エピソード3』の姿で登場しました。
You look old. はレックスとの再会をなぞるためでしょう。笑
レックス:コマンダー、年を取られた。
アソーカ:時の流れよ、レックス。
『反乱者たち』シーズン2第4話「共和国の遺物」より
今回は、”Well, that happens.”(当たり前でしょ)と短めかつ強めの回答。
懐かしい人に会うたびに「年取ったな」と言われたら、そりゃ嫌気が差すでしょう。笑
アナキン:You lost the fight.(戦いに負けた)
アソーカ:I don’t remember.(覚えてない)
アナキン:So, you do remember. That’s good.(思い出したか、よかった)
アソーカ:Why?(なぜ?)
アナキン:It meas you still have a chance to live.(であれば、まだお前にも生きるためのチャンスがあるからだ)
これってなぜ戦いのことをはっきりと覚えてないのでしょうか?
私は、サビーヌに裏切られて“失敗”したアソーカが、もう心身ともに生きることを諦めて“死ぬ準備”をしていたからだと思いました。
まるで、パドメが生きる気力を失った時のように。
この状態であれば、はざまの世界にいられる理由も、正史上の一貫性がある気がしました。
TCW S6第11話でヨーダは、特殊なタンク内で限りなく死に近づいた“人工的な瞑想状態”に入ることで、ダゴバでクワイ=ガンと会話をしています。
「(負けたことを覚えていれば)生きるためのチャンスがある」というのは「逃げずに現実の問題に向き合うことができれば、自ずと生きて果たすべきことが見えてくる」という意味でしょうか。
アナキン:I’m here to finish your training.(お前の訓練を終わらせるために来た)
アソーカ:It’s a little late for that.(間に合わなかったですね)
やっぱり、アソーカはもう死んだ気でいるように思えます。
アソーカ:What’s the lesson, Master?(では何を教えてくださるんです、マスター?)
アナキン:Live… [ライトセーバーを起動] or die.(生きるか、死ぬかだ)
“教え”ではなく、アソーカに決断を迫りました。
ここから長いアナキンの“分かるまで永遠に続く”修行が始まります。
アソーカ:I won’t fight you.(私は戦わない)
アナキン:I’ve heard that before.(昔、聞いたセリフだ)
ルークとの関連性は後ほどの章で。(指摘されてるのをTwitterで見るまで、いつ聞いたセリフなのか分かりませんでした…)
『反乱者たち』でのベイダー戦では “I won’t leave you, not this time.”(置き去りにしない。今度こそは)と言っていました。
ベイダーは”Then, you will die.”(ならばお前は死ぬ)と返しています。
アナキン:I haven’t taught you everything yet.(まだ教えてないこともある)
で、足場を切り落とすわけですが、
正直、すぐに「ああ、地の利ね」と思ってしまった。笑
そしてアソーカがベイダー戦でやった地面切り崩しも。
どっちも油断してる時に、強さ以外の要素で意表を突かれた時のことですね。
でもこれって、「ベイダーとなった後に学んだこと」を示唆しているような気がする。
③クローン大戦の追憶(ライロスの戦い)
We must adjust to the times. When Obi-Wan taught me, we were keepers of the peace. But now, to win this war, I have to teach you to be a soldier.(時代に順応してるんだ。僕がオビ=ワンから教わっていた時代、ジェダイは平和の守護者だった。だが今は戦争に勝つため、お前を兵士として育て上げないと)
by アナキン・スカイウォーカー
これって約30年越しに、アソーカが持ち続けていた悩みに答えています。
バリス:マスター・ウィンドゥは「ジェダイは平和の守護者だ。兵士ではない」って言ってた。戦争が終われば、平和の維持が私たちの役目になる。
アソーカ:でもその時、私たちは“平和の守護者”なの?“戦士”なの?『クローン・ウォーズ』シーズン2第8話より
「ジェダイは平和の守護者となるために修行を積む。兵士になるためではない。でもパダワンになってから、私はずっと“兵士”だった」
by アソーカ・タノ(『クローン・ウォーズ』シーズン7第11話)
この時は「レックスという友に出会えたから、戦争から良いことも生まれた」と結論付けていました。
自身の問いへの答えは出ぬまま、オーダー66に巻き込まれています。
この問いに対し、アナキンは明確に「お前を兵士として育てた」と言いました。
つまり彼には“あるべき姿”など眼中になく、“やるべきこと”を行うのみであった訳です。
そこに、命を守ってやりたいという強烈な“愛”が裏打ちされてはいるのですが。。
アナキン:Listen, I’m teaching you how to lead, how to survive, and to do that you’re going to have to fight.(いいか、僕は兵の率い方と生き残るための術を教えている。学ぶためには戦うんだ)
アソーカ:What if I wanna stop fighting?(戦いをやめたくなったら?)
アナキン:Then you’ll die.(ならば死ぬまでだ)
*ここで思ったけど、EP2でsoldier が「兵士」と訳されたことでTCWと矛盾してしまったのかも。ずっとかすかにモヤモヤしてたけど、辞書で調べたらスッキリしました。
・soldier:a person in an army(ケンブリッジ英英辞書)、a member of an army, especially one who is not an officer(オックスフォード)
・兵士:軍隊で士官の指揮の下にある者(大辞林/広辞苑で近い意味)
ジェダイはコマンダー以上(officer/士官)なので指揮・統率する側です。soldierは軍隊に所属してる人全般を指すので、指揮を受ける側に意味を限定した「兵士」では正確ではありません。「軍籍にある人の総称」の“軍人”がより近い訳語かと思うので、以降のsoldierは軍人と訳します。
このセリフを受けて「生きるか、死ぬか」という問いは「生きて戦うか、死ぬか」であることが提示されます。
戦場に戻るアナキンにベイダーの姿を見たアソーカ。
戦いの行き着く先に、ダークサイドが待ち受けていることを示唆しています。
④アナキンが伝えたかったこと(マンダロア包囲戦)
“You’re a warrior now, as I trained you to be.”(今や戦士だ、訓練が実ったな)
by アナキン・スカイウォーカー
“一人前の戦士になる”という当初の訓練の目的は、この時点で達成されていました。
つまり生きて戦うは、彼女の“選択・認識”の問題である訳です。
“Ahsoka, within your will be everything I am. All the knowledge I possess. Just as I inherited knowledge from my Master and he from his. You’re part of a legacy.”
(アソ-カ、僕のすべてがお前に宿った。僕の知識はすべて代々師から受け継がれたもの。お前もその歴史に加わった)
“すべての知識”はマスターの言葉によって、受け継がれてきました。
「オビ=ワンは一人前です。頑固で“生けるフォース”の修行は足りませんが、すべてを教えました(There is little more he can learn from me.)」
by クワイ=ガン・ジン(『エピソード1』より)
「お前は強くて賢い、自慢の弟子だよ。少年の頃から鍛え上げ、持てるすべてを教えた(I have taught you everything I know.)」
by オビ=ワン・ケノービ(『エピソード3』より)
アナキンにもこの言葉をかける時が来たと思うと感慨深い…。
アソーカ:You are more, Anakin. But more powerful and dangerous than anyone realized. If I’m everything you are…(確かにあなたは“それ以上”の存在ね。皆が思うより強力で危険。私にそれが宿ったってことは…)
アナキン:You’ve learned nothing.(何も学んでないな)
ここで、アナキンとアソーカの “more”(それ以上)の意味が食い違っているようです。
アソーカは「戦いを続けているうちに、ついには戦いの道・闇に呑み込まれる」ことを指しているように聞こえます。
実際に『エピソード3』でアナキンが使っていたmoreの意味ですね。
「いけないと知りつつ、より大きな力を求めてる(I want more, and I know I shouldn’t.)」
by アナキン・スカイウォーカー(『エピソード3』より)
「だから君のために、ジェダイが夢にさえ見ぬ力を得て君を守る(I am becoming more powerful than any Jedi has ever dreamed of.)」
by アナキン・スカイウォーカー(『エピソード3』より)
Back to the beginning. I gave you a choice. Live… or die.(やり直しだ。選択肢は与えた。生きるか、死ぬか)
You lack conviction. Time to die.(信念に欠ける奴め。死ぬ時が来たな)
一方でアナキンの伝えたかったことは、違うようです。
だって、“戦士”となるため訓練されてきたクローン大戦中でさえ、アソーカは一貫して師匠とは異なる道を選んできました。
そうです。ライロスの戦いからマンダロア包囲戦の空白は、観ている我々の回想で埋めるべきだったのです。
アナキン:ジェダイの務めは人の命を救うこと。寄生虫が殺されれば大勢が助かると思ってバリスは「殺して」と言った。だがお前の選択は正しい。
『クローン・ウォーズ』シーズン2第8話「ブレイン・インベーダー」より
ガーナック:[ブラスターの方を見る]
アソーカ:「やめて!」
ガーナック:[ブラスターに手を伸ばす]
アソーカ:[フォースでガーナックを突き落とす]
『クローン・ウォーズ』シーズン3第22話「囚われのパダワン パート2」より
「でも私自身で答えを見つけ出さないといけないんです。オーダーも、あなたもいない場所で」
by アソーカ・タノ(『クローン・ウォーズ』シーズン5第20話「ジェダイの過ち」より)
ラファ:自覚がなくても、あんたの行動はジェダイそのものだ。『クローン・ウォーズ』シーズン7第8話より
肩書きがなくなろうと、常に無私の“ジェダイ”であり続けた。
そして、最後の訓練でも闇のアナキンに打ち勝った上で、同じシスの目を宿しながらもアソーカは武器を捨てました。
“死と破壊”を引き継ぎながらも、アソーカは師匠を超えていた (=moreな存在だった) のです。
アナキンの教えの意味を悟ったアソーカは「生きる」こと選びます。
問題は過去に縛られ、いつか自分が、もしくは自分の弟子がアナキンの悲劇を繰り返すかもしれないと思い込んでいた自分自身だった。
だから生きてサビーヌにもう一度会わねばならない。
「ルーク…わしらは超えられるべき存在。それこそが全てのマスターの真の責務じゃ」by ヨーダ(『エピソード8/最後のジェダイ』より)
訓練はとうに済んでいて、師の存在に囚われすぎていた弟子に気づきを与えることこそが、最後に師匠が果たすべき役目だったのです。
正解に導くためには、ダークサイドの力を使ってまでして追い詰めるところにアナキンの激しい愛情がにじみ出ています。
アソーカが“正解”に達すると、アナキンはライトサイドの姿に戻りました。
なぜなら彼にとって大切なことは、“ジェダイのあるべき姿”でも、“強大な力を得ること”でも、ライトサイドでもダークサイドでもありません。
いつだって大きすぎる“愛”こそがアナキンを突き動かしてきたのでした。
ルークのEP6でのベイダー戦と比較
何度か観てる内に、EP6のルークvsベイダーと進行が一緒だなと思って、下書き段階では比較しながら読み解くのをメインにしようと思ったのですが、前の章でもう満足したので、一応進行上で共通していた点だけ指摘して終わりたいと思います。
戦闘シークエンスでの共通点
①エンドア/はざまの世界で対面して会話:「お前は分かってない」
②「戦いたくない」って言いながら戦闘開始
③ルーク/アソーカ、蹴りを入れる
④ベイダー/アナキン、足場を崩す
⑤ベイダー/アナキン、ルーク/アソーカの頭の中に入り込み、戦いを仕向ける
⑥ルーク/アソーカ、激情して勝利
⑦アナキンの帰還
愛する者(妻パドメ)を救うため闇に堕ち、愛する者(息子ルーク)を救うために帰還した。
やっぱり愛のためには何でもするのがアナキン・スカイウォーカー。
細かい話ですが、アソーカ捜索のためゴーストを飛ばしてくれたことで、戦闘中にファルコンが飛んでいるルーク戦もより感じられる粋な計らいになりましたね。
実写化について
あー、そうそう。最初に観た時に強いノイズになった実写版に対して思ったこと。
ガモーラのイメージが強くてアソーカに見えなかった。
アシュリー・エクスタインの声が聞こえなくて、アソーカだと認識できなかった。
でも何度も観てるうちに段々と馴染んでいきました。
レックスがボバ・フェットなんだよな。。(ボバボバボー、ボバボバボーバー、フェッッ)
テムエラさんは好きだけど、ヘイデンがマット・ランターをリスペクトしてくれたように、全てのクローンに命・個性を吹き込んだディー・ブラッドリー・ベイカーをリスペクトしてほしかった。
WE WERE THE CHOSEN ONES!!!!
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— Matt Lanter (@MattLanter) April 14, 2019
同じ大きさなパーギルの数が多すぎてコピペにしか見えない。
それと新共和国の軍艦だろうと、ちょっとくらい激突する“中立”な存在であってほしかった。
さいごに
ここでようやくアナキン・スカイウォーカーの物語が完結した。
次はアソーカの番。
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