Disney+(ディズニープラス)で配信中のスター・ウォーズドラマ『キャシアン・アンドー』。
終盤に突入しましたが、第8~10話で一区切りついたので、感想と考察をまとめていきたいと思います。
えっと、ですね…
第10話で既に『マンダロリアン』シリーズとも肩を並べた(超えたかも)、というのが正直な感想。
『キャシアン・アンドー』感想&考察レビュー
キャシアンの脱獄作戦、デドラ率いるISBの捜査、モスマの資金調達、ソウ・ゲレラの初登場と物語が急激に進んだ後半戦。
第8~10話を5つのテーマに分けて振り返っていきたいと思います。
①“反乱の火種” キャシアン・アンドー
奴はすごいよ。
動機はいつも「自分のため」だけど、妹や父の過去も背負って生きている。
だから一時的だろうと仲間を鼓舞し、救いの手を差し伸べることもできて、いつの間にかチームの心臓となっている。
ナーキーナ5の強制労働施設。
恐怖と絶望で追い込み、「刑期が終われば解放する」というニンジンだけぶら下げて囚人を働かせる、“帝国のやり方”のモデルケースですね。
まさに「セリグマンの犬」を具現化しています。
アメリカの心理学者セリグマンが行った実験で、犬に電気ショックを与えるのですが、電撃から逃れられない状況に長時間置かれた犬は、簡単に抜け出せる環境に移されても逃げることはしなかったのだそう。
電気ショックによって無力感を植え付けられる、ってところまで共通。
囚人は到着すると、まず電気ショックを喰らいます。
さらにチーム別で競争させられることで、意識は脱獄や反逆よりも、効率よく働いて一時的に安泰な時間を過ごすことに向かいます。(帝国怖ろしや)
52D監督役のキノ・ロイは、苦痛が終わるのを待ってうずくまる犬そのものでした。
裸足ってのがそもそも無防備だし。第10話の制御室で垣間見えましたが、アナウンスの声も低く無機質な声にボイスチェンジされているようでした。徹底ぶりよ。。
2階での不穏な動きが、終焉への引き金となりました。
“セリグマンの犬” と ここの囚人たちとの違いは「刑期を無事終えれば出所できる」という希望があったかどうか。
シフト残り40日のウラフ爺さんに希望を見ていたキノ・ロイも、この一縷の望みを失うことで覚悟ができました(せざるを得ませんでした)。
これ、アルダーニを受けて帝国が抑圧を強めたせいで、民衆の間により強い絶望が生まれ、反乱が激化したのと構図は同じ。
ついに…
ATTAAAAACK!!!!! かかれえええ!!!
床の機能がダウンした時の希望の表情よ…。
からのキノ・ロイのスピーチ。
正直、話術も言葉のテクニックも目立ったものはないです。
▼政治家パドメみたいにね
でも、ここまでの10話で語られてきたすべての積み重ねがあるから、当然のことをまっすぐ言うだけで説得力がケタ違いだから聞いてるこっちの気持ちの昂りがすごかった。。。
正直、このナーキーナ蜂起は、マンドーS2のルーク登場と同等レベルで鳥肌立ちっぱなしでした。
全員命かけて戦う理由があるから。
立場逆転の “ON PROGRAM!!”(所定姿勢をとれ!)にも痺れましたね…。
地に足のついた演出がよかった。
スター・ウォーズには、味方の損害ほぼゼロみたいなご都合主義もよく登場して楽しめる訳ですが…
キャシアンが脱走方法を相談していた相棒のバーノックは、最初に突っ込んだ一人だったこともあり、あっけなく撃たれてしまいました。。
その後も、当然ではありますが、金属の棒を投げられたくらいでは倒れない警備兵に仲間がどんどん撃たれていく。。
キノ・ロイとも混乱のさなかで、あっけなさすぎる別れ。
最後にメルシと一緒なのも、一番の相棒だったとかいう訳じゃなく、たまたま2人とも逃げ切れただけというのが渋い。
死を覚悟で立ち向かい、代償を払う。
ONE WAY OUT!!
ONE WAY OUT!!
ONE WAY OUT!!
…
「俺、泳げないんだ。」
神作。
②カーンの秘めたる想い
さあ、シリル・カーン。
スター・ウォーズ史上、都会で暮らす現代人が最も身近に感じるキャラクターではなかろうか。
学校や会社の制服やらルールやらを上手く乗りこなしてるつもりでも、結局は逸脱したり変えたりまではできず、心の中で「自分は周りと少し違う」という思いを大切に持っている…。
彼にとっては「周囲が見向きもしなかった、キャシアンの危険性を俺は見抜いていた!」というのが、アイデンティティの強い支えとなっていました。
確かに、保安企業ごときにレベルの高い訓練制度などないだろうから、持ち前の能力と固い意志だけでここまでキャシアンを追えたのは有能。
尋問で“アクシス”の追加情報を「コートの色」しか出せなかっただけで、デドラから呆れられるのは可哀そう。。笑
それより何より強く思ってたんですが、デドラはまるで「自分こそがこの一大捜査を始めたんだ」みたいに振る舞ってますが、思い違いもいいところですよね。
帝国にはびこる隠ぺい体質に、風穴を開けたのはシリル・カーンでした。
職場で戦っているデドラも、シリルにとっては頭の固い邪魔者になるという立場の逆転も面白い。
※だからといってストーカー行為を支持している訳ではありません。
この3話では、カーン家の食卓も何度も登場しました。(なぜか毎回シリアルの朝ごはんタイム)
実家暮らしの息子と母親の微妙な距離感もリアルでしたね。
独立心で反抗しつつも、結局ママにごはズズズズズズズ…ズズッ
ブルーミルク飲んでの反抗は笑いました。
でも、帝国直属の組織で働いても実家出れないほどに薄給なのだろうか…?
シリル君、昇進したし給料もちゃんと上がるかな?
③“標的”フェリックス
デドラが直々にフェリックスの人々を尋問。
デカ上がりの現場主義が光ります。
予告編で「魚か?」と切り取られて謎だった箇所が登場しました。
「魚」とは、反乱軍関係者のこと。
「コソ泥」は、反乱などの大義に関係ないただ金目的の犯罪者。
この後に「コソ泥ならまな板に載せては不憫だ」と言っているので、尋問の際に相手を懐柔するためのデドラの常套文句なのでしょう。
帝国の科学者ゴーストは、時系列逆ですが『マンダロリアン』に登場したパーシングの流れを引いている冷静なヤバい奴でしたね。
ダイゾン・フレイ種族の断末魔を使った拷問シーンも、「無音」から恐ろしさが伝わってきました。。
▼アートブックにパーシングの由来も載ってました。
拷問開始時のカメラワークに既視感あると思ったら、『エピソード4/新たなる希望』でベイダーがレイアの拷問を始めるシーンと完全に一致していました…。
[閉じる扉のレール → 足元 → 廊下を歩く警備員] が完全一致。
④ISB vs 分離主義者
惑星セグラ・マイロに赴いたルーセン。
そこで待っていたソウ・ゲレラに、アント・クリーガーが計画する「スペルハウス帝国発電所の襲撃」への協力を求めました。
ISBに”アクシス”(軸)と呼ばれるだけあって、主要な反乱分子とは繋がっているようです。。
その頃、ISBはフェリックスでの尋問からは大した情報を得られませんでしたが、
カフリーンに向かっていたクリーガー派のパイロットを捕らえることに成功。
ISBにも内通者を回していたことも明らかとなったルーセンは、情報が漏れたことを知りますが静観することに。
クリーガー派はソウの助力も得られず、ISBに計画を知られている状態でスペルハウス襲撃に臨むことに。
クライマックスはこの一大対決に向かっていくのでしょうか…。
ISBの人々 ~親近感とやってることの落差が激しすぎないか~
帝国という環境下においては、拷問や捏造も立派な仕事となり得る。
行っていることは極めて非人道的。
その一方で、普通に生活感見せてくるところがうまいですね。。。
少佐も制服の上にコート着てるとか、デドラは出勤して手袋を取りながら部下の話聞くとか、特に「忙しいからリモートにするわ」に親近感。
ISBの職場改善が進んでるのも、不思議な感じです。
デドラのおかげか、秘書みたいな立場の人が全体会議で発言をするようになり、少佐も驚きつつも普通にその発言を参考にしていました。
それと同時に、会議が終わればさっさと場を後にするデドラとは対照的に、他の監督官らは未だに会議を去るのにも少佐の許可を待っている、というところまでリアル。
にしても、デドラ・ミーロってルーセンと同じくらい未だにプライベートが不明…。
シリルとそういう関係に持っていく訳じゃないよね…?(笑)
そういえばブレヴィンは背景からも消え去ったな… 代わりにカラスでも来ないかな…
反乱分子の整理
いっぱい出てきたので、現時点での組織一覧をこれまでの言及と併せてまとめてみます。
なんと全部で10組織!!
①アント・クリーガーの分離主義(The Separatist)
クローン大戦で共和国と戦った分離主義者の残党。戦後は帝国に吸収されていましたが、抵抗運動を続けた模様。
・モスマが会合に参加するも大宰相に潜入される。(つまり、元老院での政治的な一派としても存在している?)
・フェリックスのパアクと接触しルーセンとの連絡役にした。(これはルーセンが分離主義者に依頼した?)
・スペルハウスの発電所へ襲撃を計画中。しかし、構成員の一人がISBに捕まってしまう。
・クリーガーとソウ・ゲレラは不仲
・キャシアンが反乱の一派(Sep)として言及
②マヤ・ペイの新共和主義(Neo-Republican)
・既にISBによって何度もアジトに踏み込まれた
・フェリックス(ルーセン)を経由した照準装置がアジトから発見された
③ゴーマン戦線(The Ghorman Front)
詳細は不明だが、おそらく惑星ゴーマンを拠点とした反乱組織。
・少し前にモスマが、「ゴーマンへの輸送ルートが断ち切られた」と言及
④パルチザン同盟(The Partisan Alliance)
・キャシアンが反乱の一派として言及
⑤人類崇拝派(The Human Cultist)
※人間種族(Human)を崇拝するのはエイリアン蔑視の帝国とイデオロギー似ている気がするが…。どういう主義なのだろうか?
⑥宙域主義(The Sectorist)
⑦銀河分割派(The Galaxy Partitionist)
※この2つは、どちらも「一銀河一政府」じゃなくてエリアごとの自治を主張しているのだろうか?新共和国時代の「ポピュリスト党」の大本的な存在にも聞こえる。
⑧ソウ・ゲレラの無政府主義(The Anarchist)
⑨ライロス解放運動
トワイレック種族が住む惑星ライロスを拠点とした抵抗組織。チャム・シンドゥーラが率いる。
・ISBの会議で言及された
⑩「共和国再建のための同盟」の母体組織
ベイル・オーガナが率いて、アソーカ・タノがエージェント“フルクラム”として仕える反乱組織。
※5BBY時点では、フェニックス中隊やロサル拠点のゴースト中隊と個別でやり取りしていた
言及されてないだけでこのほかにもたくんさんいますね。。。銀河広けりゃ、狙いも変わる。
▼『キャシアン・アンドー』前に明らかになっていた反乱軍結成までの歴史はこちら
ソウの問いかけへの反応を見ると、ルーセンは顔を使い分けることで、大義のために一派を見殺しにすることも厭わなかったことなどたくさんあったのでしょう。
今回マヤ・ペイを見捨てるみたいに。
となると俄然「主要メンバーと繋がって、手のひらの上で転がしてるルーセンは何者なんだ???」となる訳ですが、
今回、ついに重い口を少しだけ開きました。。
「毎日、目が覚める度に、15年前に自分で書いた方程式の唯一の答えに向き合うのさ。自分は大義のために身を捧げることを定められていると。」(筆者による意味訳)
15年前とは20BBY、つまり4年続いたクローン大戦の3年目の年に当たります。
キリのいい数字で15と言ってる可能性もあるので、19BBYのクローン大戦終結、帝国の誕生の時に起きた何かを意味しているかもしれません。
いずれにせよ、想像を絶する悲劇で様々な感情が入り乱れる中、「怒り」と「闘争心」のみに生き続ける理由を見出したのでしょう。
狂気の中から「ケノービへの復讐」の一点に集中した復活モールのように…。
自分は見ることのない夜明けのために命を燃やす。
キノ・ロイの演説も昂ったけど、ルーセンによる激白の凄みが今回の最高点でした。。
ISBスパイのロニの訴えは、ヴェルの訴えと重なります。
おそらく2人とも、最初は意図的に丁重に扱われていたのではないでしょうか? 入口のハードルを下げるために。。
事が始まってみれば「よくやった」と言われるだけ、最前線で地獄を見てきたのにルーセンは冷たいし、周りに称えられる訳でもない。
彼らの立つ“地面”の下には、苦痛と憎悪と復讐でドロドロなルーセンの世界が広がっている…
⑤揺れるモン・モスマ
惑星シャンドリラの文化もだいぶ深掘りされました。
乾杯は「サグロナ」→「サグロナ・ティーマ」で、ゲテモノ飲料「スクイッグ」はシャンドリラ人の心、結婚は若いうちに家族が手配する見合い結婚。武家社会かよ。
モスマも15歳で結婚し、16歳で議員になったと話しています。
14歳で女王になったパドメと境遇も似ていたんですね。
ここまで「パルパティーン流」と豪語しながらも、代償を恐れてきたモスマ。
シンタに諫められたヴェルに諫められる始末。。(とは言ってもモスマが一番一般人の感覚に近いんだけどね)
娘リーダは父の言うこともスクイッグも嫌いな伝統文化クソ食らえガール。
既に関係が悪い中、大義のために娘を巻き込む決断を下すのか否か…
『キャシアン・アンドー』8~10話 各話の細かい感想
最後にひとこと感想を羅列します。
第8話『ナーキーナ・ファイブ』
・冒頭、ニアモスでドアが開くときの効果音(キュイーーン)は、ベイダーのヘルメット装着音の使いまわしっぽい。
・キーフ・ガーゴの新たな出身惑星はデリス=プラタ
・にしても、シリルのあのネクタイはどうよ…? 服からピロっとネクタイもどきが出てきてるけど、内部構造どうなってるんだろう。。
・キャシアンが52Dに入る前、移送要員が遅刻した一幕。初見は味方でも潜入してんのか?とか思ったけど、あれも人手不足を象徴していたと思うと芸が細かい。
・ロイの「文字が読めるか?」って質問、帝国になってから銀河の教育水準だだ下がりしたってこと…?
▼ソウ・ゲレラの髪の毛変遷:ハゲてはモジャモジャにしての繰り返し!
第9話『誰も聞いちゃいない!』
・ペリンがステレオタイプなうるさい親戚やってますね。毅然と返すヴェルを誇りを持って見守るモスマ。2つの顔のどちらも知っている唯一の心許せる人ですからね。。
・“Rebellion comes first.” は、クローン大戦中のアナキン&パドメの “Duty comes first, especially in wartime.” を思い出します。
第10話『道はひとつ』
・キャシアン、己の恐怖のコントロール力がすごいよね。通電のタイミングを完璧に把握しているのか、電気床にも余裕でギリギリまでいるから見てるこっちがヒヤヒヤします。
・刑期残り2189日から始まり、34日後の2155日で脱出しました。
・キャシアンの「誰も聞いちゃいない!」は本当でした。制御室で確認できたのは、モニターに光る点で示される位置情報のみでした。
・あの施設に船はないのか…? 職員もあの場所に囚われてるも同然だったのかな。
・コルサントの地下街のクオリティが高くてよかった。
さいごに
『キャシアン・アンドー』、正直発表された時は「へー、キャシアン主役で作るんだ~」としか思わなかったのに、まさかトップクラスまで登り詰めてくるとは思わなかった。
事前の宣言通り、ファンサービスもない中で。
残るは2話。
じっくり嚙み締めたいと思います。
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