さて、『エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』が今年12月20日に公開となります。
ミレニアム・パダワン号ではこれを記念して、公開へ期待膨らませる人へ向けた特集<「夜明け」の待ち人>シリーズをお贈りします。
第一弾となる今回は、「改めて三部作って何だろう?」という根本的な視点から、スター・ウォーズサーガ、そして各三部作の意義を振り返っていきたいと思います。
結論から言ってしまうと、私チュン・ソロはシークエルを「継承の物語」だと思っています。さて、その心とは….
そもそも三部作とは?
まずは、基本に立ち返って「三部作」の意味から見ていきましょう。
「それぞれ独立した性格をもつが,三部にわたって主題が一貫する作品の名称。」
代表的なものとして、イタリアの詩人ダンテの「神曲」が挙げられます。
私はあまり詳しくないのですが、『地獄篇』『煉獄篇』『天国篇』の対照的な3篇から成り立っており、これら3つの物語で「永遠の生命」という一つのテーマを描いています。
ここから、映画で「三部作」といえば、「同じ世界観を分かち合いながら、対比的な筋を描き、一つのメッセージを伝える映画3作品のこと」と言えそうです。
旧三部作(オリジナル・トリロジー)とは何だったのか?
それでは、旧三部作は何をテーマとしていたのか?
それは、「善」なるルーク・スカイウォーカーが「悪」の帝国を倒す成功物語でした。
1977年に公開された「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」。
特にこのEP4は、古代の時代から一貫する「神話の構成」をなぞらえて構想された作品だったのです。
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「神話の法則」の言葉を参考にすれば…
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主人公(ルーク・スカイウォーカー)が賢者(ベン・ケノービ)によって冒険に誘われ、迷いつつも日常(タトゥイーンでの農家としての生活)を飛び出します。
仲間(ハン・ソロ、チューバッカ)と出会い、困難(帝国の追撃、レイア姫の救出、ゴミ圧縮機)に立ち向かいながら絆を深めていきました。
最終的には、敵(帝国とのヤヴィンの戦い)に立ち向かい、見事勝利。世界を救うことに成功し、最高の報酬(勇気のメダル、仲間)を手にするのでした。
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このような、起承転結のストーリーが描かれています。
三部作全体通して見れば、EP4が「冒険への誘い」の象徴。
EP5は、ハンがカーボン冷凍されて連行され、ルークはたった今右手を切り落としてきた暗黒卿が父親だったという衝撃の事実を知らされるという「試練」の時。(試練多すぎ…笑)
EP6は、皇帝と第二デス・スターという「最大の試練」との対決、勝利によって「報酬」を獲得し、銀河は平和な世界へと「帰還」するという流れです。
いつもそこには、弱気ながらもどんどん逞しく成長し、試練に立ち向かっていく勇敢なルーク・スカイウォーカーがいました。
<スター・ウォーズ アイデンティティーズ展より>
つまり旧三部作の物語とは…
①若きルーク・スカイウォーカーの「冒険活劇」であり、
②「善」であるライトサイドが「悪」のダークサイドを打ち滅ぼす「勧善懲悪」であり、
③敵を倒した後はみんなで宴に興じる
という明るくハッピーエンドで、全てが丸く収まった「大成功」な物語でした。
「新たな」三部作の誕生
この伝説の三部作は、1983年の「ジェダイの帰還」で幕を閉じます。
その後、監督ジョージ・ルーカスが温めていた新三部作(プリクエル・トリロジー)が発表されました。
「新たな三部作を創る」とは、スピンオフ作品の制作ではなく、完全な別作品を一から創る訳でもない。
世界観は共通しているのに、登場する人物はほとんど違う、それでいて新たな世界を魅せなければならない、というなかなか難しいものです。。
新三部作(プリクエル・トリロジー)
クワイ=ガン・ジン(出典:スター・ウォーズ キャラクター紹介
プリクエル・トリロジーの全体像を俯瞰すると、
シス卿ダース・シディアスにより、「選ばれし者」アナキン・スカイウォーカーが闇に堕ち、共和国そしてジェダイが滅びゆく過程を描く、暗い筋の話となっています。
反乱軍があれほど必死に戦い、夢見ていた素晴らしき民主主義の銀河共和国の元老院は、加盟国ナブーの窮状を救うことができませんでした。
さらには外縁部の惑星は次々に共和国から離脱、ついにはクローン戦争に突入。
戦費で借金にまみれ、平和の守護者であったジェダイも軍事を司る「将軍」と化し、シディアスの強大な力に気付くことなく「大失敗」、壊滅しました。
続三部作(シークエル・トリロジー)
シークエル・トリロジーのストーリー構成は、旧三部作とあまり変わりません。(EP7なんてEP4とほぼ同じです。笑)
帝国に立ち向かう共和国再建のための反乱同盟(Rebellion)が、ファースト・オーダーに立ち向かう新共和国再建のための抵抗同盟(Resistance)になっただけです。状況は何も変わっていなかったのです。
エンドアでの祝勝の宴から30年、歳を取ったレイアは、旧三部作で僕らのヒーローたちがやっつけたはずの悪の帝国まがいと孤独に戦っていました。
最後のジェダイとなったルークは、新ジェダイ・オーダー設立に失敗。「全部ジェダイのせいだ!」と言い、隠遁生活に入ってしまう始末。
新世代の若者がレイアを筆頭とし、ファースト・オーダー相手に奮闘を繰り広げます。
三部作の三部作
今回、ディズニーが新たに続三部作を制作したことで、スター・ウォーズは9部作、つまりは三部作映画の三部作という稀に見る構成の映画シリーズとなりました。
ここで、ふと振り返ると、各三部作の意義、そして全体像が薄っすらと姿を現します。
それは
「夢と冒険に溢れたハッピーエンド」な旧三部作の前と後に、
「人々の腐敗や堕落から悲劇を繰り返す」物語が続く、何とも皮肉な世界です。
悪への勝利を果たしても、内なる闇に勝てないと、またすぐに外部の悪の存在から唆されてしまう「人間の弱さ」を物語っているかのように。(これがシークエルの構成がオリジナルと変わらない理由。)
銀河の伝説となったルークも、希望に満ち溢れて再結成された新銀河元老院も、過去と同じような手法で悪(今回はスノークとファースト・オーダー)によって陥れられたのです。
「継承」の物語
“Pass on what you have learned.”(お前の学んだことを伝えなさい)
by ヨーダ
(エピソード6)
ここで注目したいのは、
プリクエルが「共和国とジェダイ・オーダーの失敗の過程」を描くのに対し、
シークエルは「新共和国と新ジェダイ・オーダーの失敗後の戦い」を描いている点。
映画内では、ベン・ソロによってジェダイ・オーダーが破壊されたことも、新共和国の元老院が機能してないことも、回想でしか触れられません。
▼新共和国がどうやって機能不全に陥っていったかは、スピンオフ小説「ブラッドライン」で知ることができます。(これ読まないとレイアたちが何の失敗と戦ってるか分からないよ!!!)
「失敗の後」に焦点を当てることで、過去と同じような「失敗」を犯した銀河がどう乗り越えていくかを描くことができる。
一番最初にあった「神話の法則」の構成から、ゆうに枠を飛び出して物語に奥行きを持たせています。
まさしく続三部作とは、
伝える側となったルークが、レイアが、
「どうやってこの試練を乗り越えていくのか?」
そして「次の世代に何を遺すのか?」
をテーマとした『継承の物語』なのです。
まとめ
「三部作」という視点から、スター・ウォーズ全体のストーリーを俯瞰してみました。
気に食わない演出が山ほどあるシークエルですが、物語の大きな流れに圧倒させられることは確か。。
さて、銀河にとっては短期間で2度目の失敗となりますが、ルークにとっては1度目の失敗。レイを相手に同じ歴史が繰り広げられるように思えます….
ここで肝となってくるのが…ヨーダ様、そしてダース・シディアスの再来。
このテーマを追求する以上、2人の登場はもはや必然であったと言っていいでしょう。
次回の<夜明けの待ち人>では、ヨーダとルークの関係から「継承」というテーマのさらなる深掘りをしていきます。
▼第二弾
それでは次に会う時まで、May the Force be with you….