しばらくぶりの小説レビュー記事です。
今回ご紹介するのは、正史小説『Master & Apprentice』!
未邦訳ですが、クワイ=ガン好きでドゥークー贔屓の身としては読んでおきたいと思い、辞書を引きながら読み続けてやっと完読。
めちゃ良かった…!
まずはあらすじを、その後に若干のネタバレ込みで感想とおすすめポイントを述べていきたいと思います。
※本ページでは、ブログ主自身が購入した上で、アフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。
概要
タイトル:Master & Apprentice(マスターアンドアプレンティス)
著者:Claudia Gray(クラウディア・グレイ)
ページ数:472ページ ※Kindle扱いあり
発売日:2019年4月16日
扱い:正史(カノン)
はい、私の一番好きなSW小説『ブラッドライン』の著者でもあるクラウディア・グレイさんの作品です。
あらすじ(冒頭のストーリー解説)
時代は『エピソード1/ファントム・メナス』のおよそ8年前のこと。
クワイ=ガン・ジンは、弟子のオビ=ワン・ケノービを大切に思いつつも、なかなか思い通りに指導が進まず、弟子との相性の悪さを感じていた。
オビ=ワンも師匠を尊敬はしていたが、掟を無視してばかりの行動を理解できずにおり、2人の関係はいつもギクシャク。
そんな中、惑星ピジャル(Pijal)で長期任務に就くラエル・アヴェロスから、クワイ=ガンを指名した協力依頼の通信が届く。
ラエルは、クワイ=ガンにとって同じ師匠ドゥークーに師事した兄弟子であり、その友情を信じてクワイ=ガンを頼ったのだ。
彼によると、ピジャルがハリーン・アズカという人物が率いるテロ組織から攻撃を受けているが、その正確な拠点も攻撃の意図もつかめていないのだという。
ピジャルは、新たなハイパースペース航路の開通に協力する条約を共和国と結ぶ直前であり、その安定は共和国にとっても死活的な利益であった。
2人は最高議長から直々の命を受け、ラエル・アヴェロスの元へと向かう。
しかしその道中、2人の関係は最悪な状態に陥っていた。
この任務のブリーフィングの際、クワイ=ガンが隠していたある“秘密”を最高議長が何の気なしに話してしまったのだ。
実はこの直前にクワイ=ガンはジェダイ評議会からある打診をされており、オビ=ワンにはそのことをまだ隠していた。
本人の口から聞かされず裏切られたと感じたオビ=ワンと、じっくり考えるつもりが最悪の形で弟子を傷つけてしまったクワイ=ガン。
彼らを権謀術数渦巻くピジャルの宮廷が待ち受けるのであった. . . .
見所ポイント(ネタバレあり)
ほんと『テイルズ・オブ・ジェダイ』との相性が抜群!
あのドゥークー回のテーマを中心に据えて、EP1の出来事をアレンジしてストーリーを構築し、ラエル・アヴェロスという新たな人物を加えて濃密に1冊の本にしました!って感じ。
物語は、クワイ=ガンとオビ=ワンがハット族の支配する惑星テスで任務を行っている場面から始まります。
サンプルでも読める冒頭の一文を翻訳すると…
「ジェダイ・コードを作ったのが誰だかは知らないが、ハット族と対峙する必要など全くなかった人なのだろう」。クワイ=ガン・ジンはそう思った。
(Whoever wrote the Jedi Code, thought Qui-Gon Jinn, never had to deal with the Hutts.)
ジェダイ・コードとは「感情はなく、平和がある。」から始まる教義のことです。
いやあ、初っぱなからクワイ=ガン節全開ですよね。笑
ピジャルでの任務中もクワイ=ガンならではの問題との向き合い方が光っていて、舌をグルグル巻いてしまいました。
そして本作、何よりも師弟関係の描写が尊くて、辛くて、、
クワイ=ガンとオビ=ワンは、相性が悪いもののお互いのことを尊敬はしているからこそ、言動が裏目に出続けてしまいます。
Ep1の結末を思い浮かべると、2人が誤解しあったり、仲直りしたり、互いを見直したりする姿に、いちいち揺さぶられてしまうのです…。
また2人の関係が主題となりつつも、過去編でドゥークーとクワイ=ガン、ドゥークーとラエル、ラエルと彼の弟子ニムの関係性も深掘りされます。
ラエルとクワイ=ガンの思考回路が、こうした師弟関係からどのように影響を受けているのかがつぶさに描かれてるんです。
とにかくプリクエル好きには堪らない、重厚&肉厚なストーリー!!!
『テイルズ・オブ・ジェダイ』と通じるテーマ
冒頭でも触れましたが、ちょうど私が本作を読んでいる時、『テイルズ・オブ・ジェダイ』が配信されました。
「めっちゃリンクするやん…」とびっくりしたことを覚えています。
硬直したジェダイ評議会、救うべきは政治か目の前の人々か、といったテーマが一貫しているのです。
ただ、本作が違っているのは評議会側の言い分も丁寧に描かれていること。
短編アニメである『テイルズ』では、反発者であるドゥークー側の迷いや苛立ちに主な焦点が当たっていましたが、
長編小説という点を活かし、本作では評議会がどう話し合っているのかや、ヨーダとクワイ=ガンの一対一での問答も描写されます。
『テイルズ』を観てから本作を読むのも、本作を読んでから『テイルズ』を観るのでも、どちらでもプリクエル節を堪能できること間違いなしです!
『エピソード1』や『クローン・ウォーズ』とのリンクも
ストーリーの構造という点から見れば『エピソード1/ファントム・メナス』とリンクする点が山のように出てきます。
例えば、ただの企業でありながら、物語に大きく関わってくるクザーカ・コーポレーション(Czerka Corporation)。
EP1の通商連合を思わせますが、クザーカは侵略してくるのではなくピジャルの政治に入り込んでいるため、さらに複雑な展開となっていきます。
他にも、『クローン・ウォーズ』でオビ=ワンが度々現地語を多少話せる経緯や、EP3で乗りこなしたヴァラクティルとの絆、なぜオビ=ワンが飛ぶのが嫌いか、ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』でなぜオビ=ワンは兄弟がいたことを覚えていたのか、などが扱われており、オビ=ワンについて深く知ることができます。(あれ?オビ=ワンの話しばかりに…笑)
オビ=ワン好きにはおすすめです。
「選ばれし者の予言」の全文が明かされる
また過去パートとして、クワイ=ガンがどのように“予言”に魅了されていったかも描かれます。
なんと、師匠ドゥークーから直接手ほどきを受けていたのです。
映画劇中では「選ばれし者がフォースにバランスをもたらす」としか明かされていない予言ですが、本作では前後の文脈含めて多くが語られます。
銀河内で実際に存在する本という扱いの『ジェダイの書』でも、「選ばれし者の予言」に関する章はおそらくシディアスによって全編黒塗りされているため、読むことができません。
まあ後付け設定ではあるのですが、「この文言はシミ・スカイウォーカーを指しているのでは…?」などと思える箇所も多くあるため、予言の答え合わせをするという謎の遊びまでできてしまいます。
一番良かったのは、クワイ=ガンが予言をどう解釈しているかを知れたことですが。
さいごに
ほんとシークエルファンに向けた『ブラッドライン』に対して、プリクエルファンに向けた『Master and Apprentice』ですな。
とはいえ、読んだ小説の数もまだまだなので、これからもどんどん読んでいきたいと思います!
読まれた方はぜひコメント等で感想を聞かせてください!
コメント