スター・ウォーズの短編アニメーション集『ビジョンズ』のボリューム2が、スター・ウォーズの日に配信開始となりました。
『ビジョンズ』はルーカスフィルム公認の下、世界のアニメーションスタジオによって制作された“スター・ウォーズ”の物語群です。
スター・ウォーズ本体の物語には影響を与えない、完全に別の内容であり、スター・ウォーズに対する独自の解釈が披露されます。
今回は、そんな特殊な立ち位置にある本作の感想と考察をしていきます。
▼ボリューム1の感想記事
総評
総じて、良かったと思います!
ボリューム1と同様に、各話で好き嫌い別れるとは思いますが、ボリューム1が“とりあえず日本化”のような作風もあったのに対し、今回は世界各地のSW解釈を垣間見れた気がします。
今回改めて、「無個性な帝国に反乱する民衆」というスター・ウォーズ旧三部作の図式が、いかに汎用性が高いのかを感じさせられました。
世界のどの国も歴史を辿れば、必ず圧制者との戦いを経験しています。
国のレベルから、民族単位、個人に落とし込んでも共感できることが、スター・ウォーズを神話たらしめているのかなと感じました。
(ボリューム1含めて、プリクエル時代だと明示されている作品が全くない理由かな)
ということで、私チュン・ソロのお気に入りエピは『スパイ・ダンサー』と『ゴラクの盗賊』の2作!
特別枠で『シス』と『アーウの歌』かな。
細かい話は次章で触れますが、特別枠とした2作品は、正史設定を踏まえつつ、アート的な目線からフォースの再解釈がされていて興味深かったです。
『反乱者たち』でサビーヌ・レンとスローン大提督がもたらした芸術路線が、こんなところでも花開いてくるとはね…。
一方で、そのままスター・ウォーズされると、ビジョンズでやる意義が感じられなくて、ただのハイクオリティ二次創作にしか見えないんだよな…。
各話のネタバレあり感想
各話の印象に残った点を挙げながら、小ネタ拾いもしていきます。
『スパイ・ダンサー』(Studio La Cachette/フランス)
まずは単純に絵柄が好みでしたね。
所狭しと舞うベールが優美で、物語としてもシンプルながら20年の苦悶の年月を感じさせるものでした。
ヘルメットを外したストーム・トルーパーとの会話で、地に足がついた“悪”との戦いを意識させつつ、
「亡き仲間のために」という言葉から、相手が純粋な新兵であろうと全く揺るぐことのない戦う決意を滲ませる。
チラッとしか映らない息子くんの角の切除痕なんかも、彼の受けてきた苦しみを想像させる美しい物語でした。
ベールを伸ばして敵を巻いて戦うのは、賞金稼ぎのラッツ・ラジィを彷彿とさせます。
英語音声を聞いていると、娘エティスの話し方に工夫がありました。
ストーム・トルーパーに対しては訛り強め話し方で田舎娘を演じている一方で、母とは比較的なめらかな英語で話しています。
帝国軍を油断させるための「話し分け」は、『反乱者たち』のヘラ・シンドゥーラを思い起こさせますね…。
てか、断然こっちの方が I am your mother. だよね???
それを言わせないから没入感が増し、良作たらしめてるのだけれども。笑
『ゴラクの盗賊』(88 Pictures/インド)
ただのインドなんだけど、何もかも驚くほど馴染んでました。笑
そして反乱軍が一般人目線での本来の姿である「無茶なことする正義のテロリスト」な感じに描かれていて良かったですね。
そんでもって登場させるエイリアンの種類が渋い。笑
ゴタール、アイソリアンはよく見るとして…
TCW S4第20話『その手に掴むもの』で登場したベルーガン種族と、
ジェダイマスターのテラ・シヌーベと同じコジアン種族はモブ初登場じゃないか?
尋問官、中途はんぱに飛んでたのが、得点高かったですね。笑
『シス』(El Guiri/スペイン)
まず、1本目にシス同士の戦いを持ってきたのは、ボリューム1『The Duel』のセルフオマージュでしょうか。
絵画・絵の具とフォースを融合させるアイデアは面白かったです!
ジェットパック描写と、ホイール・バイクに乗ってのキレキレなアクションも良かった!
が、主人公のシスらしさ、フォースの神秘性がイマイチ感じられなくて入り込めませんでした…。
『アーウの歌』(Triggerfish/南アフリカ)
カイバー・クリスタルに、パーギルに…。
これまでフォースと歌声のつながりが触れられてきた中で、フォースが歌に乗って伝播していく描写は地に沿いつつも斬新でした。
色使いも鮮やかで、ぬいぐるみみたいな造形に対して、風景は雄大な点も観てて良かったです。
アーウ親子の食べてたスープが、今までで一番美味しそうなスター・ウォーズ界の食べ物じゃないでしょうか?笑
『だってママだもの』“I am your mother.”(Aardman/イギリス)
完全にEP5の I am your father を意識したタイトルですが、本家とは真逆のほっこりストーリーでした。
ウェッジ・アンティリーズのイメージ崩壊だけやめてくれ。。
自分のグッズを売りたがる卑しい人間じゃねえんだよ。
デニス・ローソン本人を起用して、本家キャラ出すんなら、さすがにケジメが必要じゃないっすか…?
このスタジオ、小ネタ大好きかよ。
・マンドーお面、マックス・レボのぬいぐるみ、
・会場のトイレはウーキーサイズ、人間サイズ、ジャワサイズの3種類。
・木彫りの人形には、バンサ、ブラーグ、ポーグと勢揃い。
・腕を引きちぎるウーキー。
・その割になぜスピーダーの鍵を閉める音は、現実世界と同じにした…?
・ミニデス・スター
その他
思ったとこや、正史作品とのリンク点を洗っていきます。
『スクリーチャーズ・リーチ』(Cartoon Saloon/アイルランド)
人物の背景が何もなくて、唯一ある「工場勤めの児童労働者」という設定も何のために付いてるか分からなかったです。
洞窟に住むお化けがセーバーを持ってると興ざめしてしまいます。。
アイルランドに伝わる話を取り込んだ話だそうです。
『星の中で』(Punkrobot/チリ)
マスクが完全にエンフィス・ネストのオマージュですね。
絵が動く壁画は、『反乱者たち』に登場した“狭間の世界”の壁画と同じ。
スノー・トルーパーにしたのは、実は雪惑星だから?なぜそのチョイス?
『ダークヘッドへの旅』(Studio Mir/韓国)
一番アニメ的な絵柄でしたね。
善悪が混じってというメッセージは良かったのですが、『シス』と被ってしまったこともあり、若干印象が薄くなってしまった感があります。。
『穴』(Lucasfilm Ltd./アメリカ & D’ART Shtajio/日本)
うーん、強制労働の描写はマイルドだし、街の人間が助けた動機も曖昧というかライトサイドを信じすぎな気がします。。
描くべきは「救出された後、痛みを伴っても共生する覚悟はあるのか」では?
てか「世界のスタジオが製作」と謳って、国一覧に「アメリカ」を出しておきながら実は本体でしたっていうのは何なの?笑
さいごに
いろいろ書きましたが、いつもより一歩引いて観れば楽しめるかも、な作品群ですね。
『スパイ・ダンサー』も芸の細かいスルメ作品だけど、やっぱりトータル1位は『The Duel』。
みなさんのお気に入りランキングも教えてくださいな!
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